朝雨女の腕まくり

のんびりアラフィフシングルマザー。仕事のことや身の回りのいろんな話。時に真実・時にフィクション。

春の海

白く乾いた細い道を抜けると、海が見える。


始めてきたときは、気のおけない友人たちが一緒にいた。

まだ、学生だった。


坂の上に立って、口々に「海が見えるぞ~!」って叫んで、笑い転げた。

意味なんてなくてもいい、ただ勢いとその瞬間を楽しめればいい。そんな時期だった。


仕事の休みで、ぽっかり空いた休日。

ふと気づくと海を目指していた。独りで。



あの坂を越えれば、海が見える。

遠浅の海の波が砂浜へ寄せて、細かい泡となって消えてゆく。それを見渡せる。


海は優しかった。


一歩一歩波際まで近づいて、海の音が身体の全部を包んだところで、お尻をついて砂浜に座った。

体育館で座るみたいに膝を抱えて、しばらく海を見ていた。




少し前にあの人が言った言葉。

「俺はひとりだなって思うけど、孤独ではない。alone だけど lonely じゃないって思ってる」


ちょっと苦笑い気味の彼だったが、いい言葉だなって、思った。

大人の言葉だ。



海を見たからといって、答えが見つかる訳ではない。

いろんな海でいろんなタイミングでいろんな人と思いを重ねて。

だから人は海に来るのだろう。

それぞれの海に、会いに行くのだろう。